ドゥテルテ大統領「オバマ氏地獄に落ちろ」

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フィリピン人が言うには「もちろん今までの大統領でこういう事を言う人はいないけど、地方のガラの悪いおじさんだったら言っちゃうような言葉ではある」という事。
基本ドゥテルテはタガログ語でしか話をしないので、英語に変えられて要するに凄い言葉で世界中にワアアッと広まっちゃう。
フィリピンの人が言うには「ちょっとやるか?」という事でファイティングポーズを取るときの決まり文句みたいな感じらしい。

でこの人は今90%くらいの支持率がある。
これに対してアメリカの報道官も割合冷静に受け止めてる。
例えば日本もかつて石原慎太郎さんなんかがそれでも「NO(ノー)」と言える日本―日米間の根本問題 (カッパ・ホームス)という本を書きました。
要するにフィリピンは最終的にはアメリカに対して本当にNoとはなかなか言えない。
ただ黙って最初から言うこと聞きますという事だけが良い事じゃない。
つまりこれだけの暴言を吐くことによってフィリピンがこれだけ世界から注目された。
そういう意味でこの人なりの色んな計算はあるんでしょう。

もう一つは英語に訳されてそれが世界中のメディアに回る。
世界中のメディアというのは大体英米中心です。
これらの一種のプロパガンダという要素もあるし、それからそこに中国の手が入ってるという事もある。
だから一概にはこのプロパガンダ合戦に、しかも日本のメディアも今頃になってみんなで乗っかってるけど、要するにこの人を単に暴言ばっかり吐いてまともな人じゃないみたいに思うのはちょっとまずい。
やっぱりあまりプロパガンダ合戦に巻き込まれない方がいいという事と、それから彼を反米親中だという風に単純にレッテルを貼るのも今のところまだ早計です。

で、これだけフィリピンが注目を集める。
一方でこの人は大統領になる前から経済財政政策については非常に優秀なブレーンを揃えていて、大体八項目の構造改革プランを出した。
これはどういうことかというと前のアキノさんの政権の時には一応財政の上では堅実なやりくりをしてきた。
アキノさんの時に大体6%の成長軌道に乗せたんだけどそれでもみんなが物足りないと思ってるのが治安対策であり、それからフィリピンの積年の課題である土地制度改革。
要するに土地制度そのものが非常に旧態依然としてる。
だから言ってみれば昔の植民地時代そのまんま。
こういう制度が残っている以上中々貧富の格差が縮まらない。
それをやっぱり開放していこうという事。

それからもう一つは外資の規制を緩和する。
要するに今までフィリピンは最大40%までしか外資が株を持てなかった。
それを半分以上、つまり実質上の外資系企業をOKにする。
こういう様な事をすることによって何が起きるかというと要するにアメリカや日本、中心では日本という先進国或いは欧米、こういうところの人たちがよりフィリピンに投資がしやすくなる。
ましてやフィリピンのこれも積年の課題だった治安が良くなればより外資系企業は出やすくなる。
そうすることによって過去からずーっと続いてきている華僑による経済支配、それからスペイン時代から続いてきているフィリピンで言う支配層、この人たちによる一部の人たちに富が集中するという構図を崩せるという意味で結構政策的には評価をされていてIMFや外国人の投資家からも既に評価されてフィリピンの株はずっと上がってきてた。
ところがこの一カ月くらい連日のようにドゥテルテ大統領が物凄い事を言ってるという事ばっかりが報道されるようになって逆にフィリピン株は下がってきた。
通貨のペソもずいぶん売りが入って結構安値になってきてる。
やっぱり報道の力は凄いんだけどそういう意味でこの人が大統領になったという事はこういう無茶苦茶なおじさんという事だけじゃなくて実は結構ちゃんとしてる面もある。
そういう意味であまりこの暴言騒動というものに惑わされるべきでない。

今までフィリピンはずっとアメリカに酷い目にあわされてきた。
アメリカの植民地になってから散々人は殺されて、戦後だってアメリカの間接支配です。
早い話、アメリカに盾突く大統領は今まで全部消されてきた。
そういう中でこの人が出てきてこれだけの事をアメリカに言うという事で、フィリピンの国民としてはもう胸のすく思いなんです。
それで90%というすごく高い支持率になってる。
だから「本気で対米自立するぞ」とフィリピン国民に呼びかける事の出来た稀有なリーダーでもある。

アメリカの大統領にここまで言うというのは、ちょっと前にベネズエラのチャベス大統領が国連総会で悪魔呼ばわりしたり、それからイランのアフマディネジャドとかね。
やっぱりいずれも人気があった。
だけどフィリピンにおいてはよりそれが顕著で、やっぱり相当アメリカとの歴史で問題がありましたから。
そういう意味でこの人への支持はとても高い。
その国内の支持をがっちり固める事と、それからアメリカに少々の事を言ったって、口で言うだけでは関係が壊れないというのが分かってるからまあ言ってるわけですけど。
それで「中露から武器を買う」と言ってる割に実際にはイスラエルから買おうとしてるという話もある。
そういう意味で結構うまい落としどころも考えていたりするので、中々な人だなという風に思います。
それと一方では日米と防衛協力をしようという流れがあって、これだけアメリカの事をあしざまに言ってるけど日本の事は全然言ってなくて、与し易いとかカモれると思ってるのかもしれないけど、でもこの人が一番最初に世界の閣僚で会談したのは岸田さんだし、安倍総理とはすでにラオスで割と良好な日比の首脳会談をしてます。
それで今月もまた来ます。
まあその前に中国に行くけど。
でもそういう事を考えると日本に対してちょっと違う重きを置いている、最大の援助国だという事もあり。

それからもう一つ言っておきたいのはこの人が色んな暴言を言っているときに正しい事も色々言ってて例えば「自分はフィリピン国民以外の誰の言う事も聞かない」、これは正しいです、フィリピンの大統領だから。
それから「アメリカよ、EUよ、自分はお前たちの様な偽善者にはならない」と言ってる。
これはすごく重い言葉だと思う。
この人は1945年の終戦の年の生まれ。
そうすると自分の親の世代には殺されたり色んな事があった。
それから戦後も色んな事を見てきている世代。
そういう中でアメリカという国の酷さ、「今まで酷い事やってきただろう?その国がフィリピンに対してそんな事言えるのか?その偽善ぶりは何なんだ?」という事です。

実は今年の6月、日本の外務省があることをやったんです。
それは何かというと都内にフィリピンの過去の大統領、キリノ大統領の銅像を建てました。
なんで銅像を建てたのかというと日本人の戦犯を恩赦で釈放したからという事に対しての御礼の意味なんですよ。
それはどういうことかというとこのキリノさんという人は自分の奥さんや子供を日本軍によって殺されたにも拘らず戦後になって、戦犯と言われる人たちをフィリピンが捕らえていたんですけどそのうちの何人かを釈放した。
それに対してお礼の意味を込めて今頃になってという話なんだけど、歴史の真実は違います。
キリノさんの奥さんやお子さんというのは日本軍が殺したのではなくアメリカの空爆によって殺されてるんです。
しかも戦後になってからフィリピンが日本に対して凄い額の賠償を要求してきて、その時日本はとてもそれに応えられる状況じゃなかった。
その時に「自分の所で捕まえている戦犯を処刑する」と言って実際に処刑し始めた。
で「やめてくれ」という事で日本側は泣きを入れた。
そういう様な経緯があってその後釈放という風になった。
その時にアメリカが間に入るんです。
「ちょっといくら何でもやり過ぎだ」と。
そういう事実も一方では言われている。
事実というか史実。
これは色んな両方のストーリーがあるので検証が必要だと思う。
だけどそういう幾通りかの全く違うストーリが言われている中で、何故外務省は銅像を建てるの?
あのね、日本人は日本国内に外人の銅像を簡単に建て過ぎ。
ご存知かもしれませんが戦後になってから日本が勲章贈った人が居るでしょ?
日本に対して凄く酷い事をしたアメリカ人に。
この人の銅像もどこかにありますよね?
名前も言いたくないけどカーチスルメイの。
言ってみれば日本人を虐殺した人をなんで戦後に表彰しないといけないの?
つまり敗戦国ってこんなに惨めなものかと思うんだけど、要するにフィリピンと日本の関わり合いの中にも事実じゃない事も相当そういう形で紛れ込んでいる可能性が実に濃厚。
これをドゥテルテさんはどういう風に理解してるのか分からないし、或いはこの人がもっと凄く人が悪ければ事実を知っていても違う風に利用する可能性もゼロではない。
ただやっぱりこの人のナショナリズムというのは反米だし反欧米。
だから余計に今のアメリカの大統領に対して腹が立つんだと思う。
要するに彼は白人じゃないから「そのアメリカの偽善を一番よく知ってるだろ?」という思いが恐らくあるはず。
あの「俺は偽善者にはならない」という言葉には非常に色んなものが含まれてるんじゃないかなと推察します。
そういう意味でこの人の色んな発言というものを日本のメディアが追随するかのように伝えるのもちょっと問題だなと思います。
次回に続きます。
関連書籍 物語 フィリピンの歴史―「盗まれた楽園」と抵抗の500年 (中公新書)
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